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特集・コラム

新宿 北村写真機店のカウンターで、お薦めライカを味わい尽くす|Vol.033 ライカM2

2025/06/14

カメラのキタムラレビューサイト『ShaSha』より転載

はじめに

皆さんこんにちは。ライターのガンダーラ井上です。新宿 北村写真機店の6階にあるヴィンテージサロンのカウンターで、ライカをよく知るコンシェルジュお薦めの一品を見て、触らせていただけるという企画、『新宿 北村写真機店のカウンターで、お薦めライカを味わい尽くす』。本企画ではコンシェルジュの方に「今はこのモデルを見せたい」と感じるままにお薦めライカを用意してもらい、いろいろ教えていただいています。

コンシェルジュのお薦めは?

今回お薦めライカを見立てていただいたのは、新宿 北村写真機店コンシェルジュの中明昌弘さん。プロのフォトグラファーだった経歴を持ち、写真を撮るという実用の視点と趣味性の高さが両立したセレクトが持ち味の中明昌弘さん。さて、今日のアイテムは何でしょう?

M3に続く、M型ライカの2号機

ライカM2を手にとっているところを撮影した写真

前回に中明さんが用意してくれたのはM型ライカの礎となったM3でした。その流れからするともしかして? と思ったとおりカウンターの上にはライカM2が置いてあります。しかも、1台や2台でなく5台ものライカM2が。

「全国のカメラのキタムラからいろんな世代のライカM2を集めてきました。ということで前回のライカM3のように基本に立ち戻って、今回はライカM2の紹介をできたらと思います。M2はM型のフィルムカメラのエントリーモデルとして、ライカを始めたいという方にお薦めです。35mmレンズの画角は自分の距離感としては好きだなという方にはM2からスタートしていただくのがいいかなと思います」

ライカM2の基礎をおさらいする

ライカM2を5台順番に並べて撮影した写真

「ライカM2は、M3の廉価版として企画されたモデルです。1957年から製造されて全体の生産数は8万7千台ほどです。M3のファインダーは50、90、135mmのフレームが出ますが、M2ではファインダーの倍率を下げて35、50、90mmの撮影フレームが出ます」

標準レンズを大きな撮影フレームで撮りたいならM3、35mmの準広角レンズも外付けファインダーなして撮りたいならM2ということですね。

「M2で新しく設計されたファインダーの基本的な構造は現行品まで継承されていて、M3と比べると簡略化されているので修理・メンテナンス性が非常に高い方式になっています」

ファインダー倍率以外で、廉価版という観点でのライカM3からの変更点は?

「セルフタイマーなし、カウンターが自動復元ではなく手動でディスクを回転させて設定するようになったのが機構として省略された部分です。あとは窓の形もM3に比べてちょっと簡素化されているので製造コストも抑えられています。距離計の窓も含めてスッキリと平面的なかたちになったのですが、廉価版といっても現在のM型ライカに続いているのでチープな作りではないです。むしろM3がこだわりすぎていたのではと思います」

M2の初期に見られるボタンリワインド

ライカM2のボタンリワインドを拡大して撮影した写真

今回、全国のカメラのキタムラさんの協力を得てライカM2各種を新宿 北村写真機店に集結していただきましたので、そのバリエーションを見ていくことにしましょう。まずは初期型。フィルム巻き戻し用のクラッチ解除パーツがボタンですね。

「ボタンリワインドと呼ばれている初期のものでも、ボタンの周囲にガイドがない最初期型は200台だけ製造され、採光窓はM3と同じ白いすりガラスになっています。それは全国のキタムラのどこにもなくてご用意できていません(笑)。そのタイプは巻き戻しの際にボタンを押しっぱなしにしていないと巻き戻せません」

ふむふむ、初期のボタンリワインドにも最初機と改良型モデルがあり、ここにあるのは改良型のガイド付きのタイプですね。

「ボタンの外周にガイドのついているタイプは、一度ボタンを押せばクラッチが外れてそのまま巻き戻せます。撮影フレームの採光窓もすりガラスタイプからギザギザのあるパーツに変更されて、より多く光を取り入れられるようになっています」

ボタンリワインドはライカM2だけに採用

ライカM2ボタンリワインドモデルを撮影した写真

「ボタンリワインドはパーツも少なくすっきりした見た目なので個人的には格好いいなと思っています」

ここのパーツがボタンになっているのはM2だけなのが魅力で、ボタンリワインドに的を絞って探しているお客さんもいるとのこと。人気がある分お値段もボタンでないタイプより割高の中古価格になっているそうです。この位置にボタンが復活したモデルとしてはデジタルのライカM(Typ240)とM10系統がありますが、それは単なるスイッチなので機構的な意味は異なります。

しばらくするとボタンはレバーに変更される

ライカM2の巻き戻しレバーモデルを正面から撮影した写真

「ボタンは見た目が格好良くてシンプルな印象ですが、程なくレバーに仕様変更されます。コストカットのためボタンにしたけれど、そこまで切り詰めなくてもいいんじゃない? ということと、撮影途中に間違って押してしまうなどの事故を防ぐためにM3と同じ仕様の倒すレバーにしたのだと思います。M2にRレバーが装着されたのと同じタイミングで、M3のRレバーも短くなったようです」

M3のRレバーが後期では微妙に短くなっているという証拠の画像が載った記事はこちら

ライカM3クロームのトップカバーを撮影した写真

新宿 北村写真機店のカウンターで、お薦めライカを味わい尽くす|Vol.030 ライカM3(シングル&ダブルストローク)

2025/03/10
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「M2は当初からオプションとしてセルフタイマーを追加で載せることができたようですが、工場出荷時にセルフタイマーを搭載したものが製造の後半に出てきます。当時のフィルムは感度が低く、スローシャッターを切る場合にはセルフタイマーはあったら便利だったのではないかなと思います」

ファインダー採光窓にも仕様の変化がある

「M2は、製造された時期によって採光窓の仕様を変更しています。ボタンリワインドの中でも959-の番号以降から採光窓のギザギザのピッチが荒くなって外を向いているなど、若干の違いがあったりします。これはギザギザのピッチが細かくて中を向いている時代のものです」

「こちらはギザギザが大きくなって外にあるタイプですね。ちなみにギザギザが外にあるのと中にあるもので採光率を計算した人がいるそうですが、どちらもほぼ変わらないそうです(笑)。実際にファインダーを覗いて比較してみてもあまり変わりは感じられません」

 

ふむふむ。ギザギザのパーツにも変遷があって、この外ギザがM4以降の標準仕様になったということは理解できました。でも、ちょっと待ってください。このライカに刻印されている型番、M2じゃなくM2-Rですね!

ライカM2-Rとは何か?

ライカM2とライカM2-Rを並べて上から撮影した写真

「そもそもM2-Rは、1966年にアメリカ陸軍向けに作られた、ライカM4と同様のラピッドローディングシステムを搭載した特殊モデルがその始まりです。アメリカ陸軍が発注したKS15-(4)は納入前にキャンセルされ、宙に浮いたロットが欧州で流通したものです」

 

写真の上がKS15-(4)を民間に販売したもので刻印は単なるM2。見た目も刻印も普通のM2だけど、M4と同等の迅速さでフィルム装填できるということですね。

「その後、『これいいじゃん!』となってニューヨークライツの発案で刻印をつけて売り出したのがM2-Rです。言ってみれば当時の限定品のような扱いの製品だと思います。中古市場で見かける頻度は多いですが製造台数はおよそ2000台と少なめです」

ラピッドローディングシステムのメリット

これが普通のM2の底蓋を外したところ。スプールを抜き出してフィルムの先端をギュゥ〜ッと挿入してからカメラ本体に戻してあげる必要があり、このやり方は戦前のバルナック型ライカから受け継がれてきた方式です。

こちらが真M2-Rと呼ぶべきKS15-(4)市販品の底蓋を外したところ。刻印付きM2-Rも同じ仕様です。スプールを抜き出す必要はなく、フィルム巻き上げ軸にある3つのスリットのどこかにフィルム先端を差し込めばOK。装填方法がイラストにも書いてありますね。この方式はライカM7まで踏襲されていきます。

「M4のスピードでフィルム装填できるのはメリットですが、巻き戻しはノブなのでグリグリするのに時間はかかりますし面倒くさいです(笑)」とのことですが、スプールを誤って泥沼の中に落としてしまう等のリスクを回避できるし、手袋をしていてもフィルム装填できるというメリットがあるかと思います。

まとめ

ライカM2にズマロンを装着して正面から撮影した写真

というワケで、今回はM型ライカの基本編の第2弾としてライカM2のおさらいをしていただきました。シメのカットは集合写真ではなく、中明さんのセレクトで単品でのスタイリングです。

「自分の個人的な好みとしては、すべて初期型のパーツになっているのがいいですね。必要最小限のM型ライカというコンセプトがはっきりわかることと、パーツが少ないのでスッキリしていています。理想のM2はガイドなしのボタンリワインドでセルフタイマーなし。レンズはいつものズマロン35mm f2.8です。ズミクロン35mmF2の8枚玉よりも価格は抑えられるので、実用の組み合わせとしてお薦めです」

M3だけでなく、M2にもマイナーチェンジの部分が多いので、M型ライカの歴史的な変遷を楽しむことができることが分かりました。ライカM2は趣味として楽しみつつ、もちろん実用としても十分な能力のあるカメラです。

ご紹介のカメラとレンズ

  • ライカM2 ボタンリワインド後期 価格249,400円 (税込)
  • ライカM2 Rレバー 価格231,200円 (税込)
  • ライカM2 Rレバー セルフタイマー付き 価格185,000円 (税込)
  • ライカM2 ラピッドローディング 価格630,000円 (税込)
  • ライカM2-R 価格594,000円 (税込)

※価格は取材時点での税込価格

案内人

ヴィンテージサロン コンシェルジュ:中明昌弘
1988年生まれ。愛用のライカはQ3

執筆者プロフィール

ガンダーラ井上プロフィール写真

ガンダーラ井上

ライター。1964年 東京・日本橋生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後、松下電器(現パナソニック)宣伝事業部に13年間勤める。2002年に独立し、「monoマガジン」「BRUTUS」「Pen」「ENGINE」などの雑誌やwebの世界を泳ぎ回る。初めてのライカは幼馴染の父上が所蔵する膨大なコレクションから譲り受けたライカM4とズマロン35mmF2.8。著作「人生に必要な30の腕時計」(岩波書店)、「ツァイス&フォクトレンダーの作り方」(玄光社)など。編集企画と主筆を務めた「Leica M11 Book」(玄光社)も発売中。

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ライカM2 ブラックペイント ボタンリワインド

新宿 北村写真機店のカウンターで、お薦めライカを味わい尽くす| Vol.005 ライカM2 ブラックペイント ボタンリワインド

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