フォクトレンダー展 PHOTO EXHIBITION VOL.3 “Masterpiece”|主催者 大村英明さんへのスペシャルインタビュー
カメラのキタムラポータルサイト「ShaSha」より転載
撮影&文:ShaSha編集部
はじめに
新宿 北村写真機店では2023年11月15日~11月30日の期間で「フォクトレンダー展 PHOTO EXHIBITION VOL.3 “Masterpiece”」を開催しています。「フォクトレンダーのレンズで撮る」というシンプルなコンセプトのもとに、なぜフォクトレンダーが幅広いユーザーを魅了し続けているのかを、本展を通してお伝えしています。ゲストに写真家のハービー・山口さんをお迎えし、世代・性別・環境さまざまな43名の作家が参加しております。長年のフォクトレンダー愛用者から初めて使用した方まで、一人一人の想いが込められた作品が集結しました。今回は主催者の大村 英明さんにインタビューを行い本展の魅力について伺いましたので是非ご覧ください。
2023年11月15日 (水) ~ 11月30日 (木) の期間中、新宿 北村写真機店 6Fイベントスペースにて開催中。どなたでも無料でご覧いただけますので、ぜひお立ち寄りください。
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コンセプトとフォクトレンダーへの想い
「フォクトレンダーのレンズで撮る」というコンセプトにした理由を教えてください
幅広く沢山の方に参加してもらえる写真展のコンセプトを考えた際に、ライカレンズに比べると安価なのに描写力が優れている事から、これまで多くの方に愛用されてきたフォクトレンダーで撮る事にしたらどうだろうと考えました。そして私自身とても想い入れのあるレンズブランドだった事もありこのコンセプトで写真展を行う事にしました。
フォクトレンダーへの想いについて教えてください
今から40年も前の話しになりますが、フォクトレンダーは気になるレンズでしたので色々と調べていたころ、Lマウント(スクリューマウント)が登場したので試しに使ってみました。柔らかな表現が出来ることや、表現にあった豊富な種類のレンズがある事を知り徐々に魅了されて行きました。その当時私は20代後半か30代になったばかりの頃で、ライカレンズは高価でなかなか買えるものではありませんでした。そんな中、フォクトレンダーは手ごろな価格帯だったにも関わらず良い画が撮れるので、このレンズを少しづつ買い増して行き気付くと無くてはならない存在になっていました。
またこの頃メーカーから依頼を受けてフォクトレンダーでの作例撮りをしていました。作例はライカレンズと対比させて撮影していましたが、そうやって精緻に撮影すればするほどこのレンズの高い描写性能や豊かな表現力に気づかされましたのを覚えています。
随分長い間フォクトレンダーを愛用されてきたんですね
描写がクラシカルなものの中に外観も昔のレンズをオマージュしたものがあって、カメラに装着すると一段と味わい深いデザインになりますので、そのまま装着しておきたいという気持ちになります。こうしたモノとして所有する楽しみもあってか気付いたら40年愛用しております。
ただフォクトレンダーの歴史はもっと長く戦前につくられた魅力的なレンズも沢山ありますので、その長い歴史に比べたら私が関われたのはほんの少しかもしれません。
テーマと応募について
テーマの“Masterpiece(マスターピース)”について教えてください
フォクトレンダーを最初に購入してから、今まで撮りためたものの中で最高の1枚を提出してもらいたいというのが趣旨になります。もし応募の1日前に購入したのであれば、その1日撮影された中で1番のものをご応募頂いても構いません。
第3回目を開催できるという事は人気の写真展になっているという事でしょうか
おかげ様で少しづつ参加者も増えています。1回目は十数名の作品を展示しました。徐々に写真展の認知度も上がり2回目、3回目と回を重ねる毎に参加者の数も増えて今回は43名の方に参加頂きました。また今回は応募終了後も30名の方から問合せを頂くなど、今後はもっと大きな写真展を開催できる予感がしています。
またそもそも「フォクトレンダーのレンズで撮る」というコンセプトで3回目の写真展を迎えられたのは、フォクトレンダーを多くの方が愛用してきたからだと思います。ハービー・山口さんのような著名な方も使われていますし、ライカを使われる多くの写真家の方であれば一度は手にした事があるのではないでしょうか。
どのような方の写真を展示されているのですか
一部の作家さんにはこちらから依頼して展示していますが、多くの作品はSNSなどで募集を行い応募してもらったものになります。プリントは写真展の統一感を持たせる為に全てアフロアトリエで行い仕上がりは任せてもらっています。凹凸のないプリントにしてモノクロからカラーと幅広い写真がある中で目が疲れないように心がけています。なのでこの写真展の特長はフォクトレンダーのレンズを使う事とプリント方法に縛りがあるという事になります。
写真展の見どころ
これぞフォクトレンダーといった写真はありますか
プリントの仕上がりを運営に任せてもらっている事もありますが、フォクトレンダー愛用者の方のMasterpiece(マスターピース)は纏まりがありどの作品を見てもフォクトレンダーを感じる事が出来るかもしれません。
レンズの特長が出ていると感じる作品の一つに木下大輔さんの線香花火の作品があります。撮影に使ったULTRON 75mm F1.9 SCは豊かで潤いのあるボケ味とピントがあったところはカリっと解像するのが特長のレンズで、浅い被写界深度のなか火花を美しく捉えられておりフォクトレンダーならではの魅力的な作品に仕上がっていると思います。
特殊な作品としては新品のライカM11を持って海の中に入りレンジファインダーを覗いてフォーカス合わせを行って撮影しているものがあります。潜った画ではなく、海のしぶきや表情を撮っている方で面白い作品になっていますね。フォクトレンダーの場合、マニュアルフォーカスしかないのですが、すかすかじゃなくてトルクがあって滑らかな回し心地が特長で操作していて気持ち良いと思います。ただそれを簡易的なハウジングで海の中で行うというのは大変な苦労があった事が伺え、作品の美しさの裏側にある緊張感のようなものを感じ取ることができます。
大村さんの写真についても教えてください
これはイタリアのアマルフィーで撮影した写真で、滞在中ずっと天気が悪くて何も撮らない日が続いていました。夕方桟橋から帰ろうとした時に、3人のおじさんとすれ違った丁度その時に雲の間から太陽の光が入ってくるのが見えました。あっ、撮れる!と思い、たまたまボディーに装着していたフォクトレンダー NOKTON 21mm F1.4 Asphericalで2枚撮りました。マニュアルフォーカスなのでピントを自分で合わせなければならないので、1回シャッターを押した後、遠ざかる3人のおじさんにピントを合わせ直して2枚目を撮りました。そこで光が無くなり2枚しか撮れませんでしたが、とてもお気に入りの写真となりました。
写真展の特長を教えてください
ハービー・山口さんのような大御所の方から中学生の方にも参加頂いていて幅広い方の作品を展示してます。これは希望した通りになっていて、ご年配の方も非常に若い方も一緒に楽しめる写真展になりました。
そして希望を言えば、写真展を通じてプロと話した事がない学生の方にはこの場で気軽に話しをしてもらえたらいいなと思っています。例えばこんな写真を撮りたいなんて話しをしたら、こんな撮り方や、それにはこんなレンズもあるよ、なんて会話ができる、そんな交流の場になったらいいなと考えています。
またこの新宿 北村写真機店のギャラリーなら教えてもらったカメラやレンズをすぐに手に取り確かめる事も出来るので、今回とても良い場所で写真展が出来たなと思っています。
今後の展開
第4回目の開催もありますか
「フォクトレンダーのレンズで撮る」というコンセプトで4回目の開催も現在模索しています。先ほど話した通り回数を重ねる毎に参加者も増えていますので、皆さまから興味を持って頂ける間は、この先も続けて行ければと考えています。
現在カメラはライカの方が多いですが、マウントアダプターを使ってライカ以外のミラーレスカメラの方も増えてきました。今後はキヤノンのRFマウントやニコンのZマウント、富士のXマウントの製品も出てきているので、フォクトレンダーを通して様々なカメラで撮影された作品を見る事が出来るようになると思います。それもとても楽しみですね。
第3回目の写真展も11月30日まで開催していますので、是非遊びにきてください。
皆さまと色々なお話しが出来れば嬉しく思います。
1956年 東京生まれ。現在は、埼玉県川越市にてクラウドギャラリーを運営。若い頃からヨット、サーフィン、ウインドサーフィンなどの海洋スポーツを中心に、海外のイベントを撮影。その際にイベントだけでなく風景やイメージ写真を撮影するようになり、現在も街中のスナップを撮りにバングラディシュをメインに海外へ旅に出ている。
フォクトレンダー展 PHOTO EXHIBITION VOL.3 “Masterpiece”
- 2023年11月15日 (水) ~ 11月30日 (木) 10:00~21:00 (最終日は17:00まで)
- 新宿 北村写真機店 6 F イベントスペース
- 東京都新宿区新宿3丁目26-14 アクセスはこちら
- 入場料:無料
- 主催 / 協賛:写真家 大村 英明 / 株式会社コシナ