新宿 北村写真機店のカウンターで、お薦めライカを味わい尽くす|Vol.049ライカM EV1
カメラのキタムラレビューサイト『ShaSha』より転載
はじめに
皆さんこんにちは。ライターのガンダーラ井上です。新宿 北村写真機店の6階にあるヴィンテージサロンのカウンターで、ライカをよく知るコンシェルジュお薦めの一品を見て、触らせていただけるという企画、『新宿 北村写真機店のカウンターで、お薦めライカを味わい尽くす』。本企画ではコンシェルジュの方にお薦めライカを用意してもらい、その機種の魅力を伝えていただいております。
コンシェルジュのお薦めは?
今回お薦めライカを見立てていただいたのは、新宿 北村写真機店コンシェルジュの中明昌弘さん。プロのフォトグラファーだった経歴を持ち、写真を撮るという実用の視点と趣味性の高さが両立したセレクトが持ち味の中明昌弘さん。さて、今日のアイテムは何でしょう?
M型デジタルの最新機種
「今日のカメラはM型ライカの最新機種、ライカM EV1です」と差し出されたライカ。その造形はよく見慣れたM型ライカそのものですが、何かが違うと感じさせます。
「こちらは2025年に発売開始されたモデルで、距離計ではなく電子ビューファインダー(EVF)をボディに内蔵した初めてのM型ライカになります。M型ライカの歴史を考えると、革命が起きた機種なのではないかと強く感じています」
革命的なコンセプトのM型ライカ
「ブライトフレームと二重像を合致させる距離計を組み合わせた、いわゆるレンジファインダーカメラだからこそM型と言われていたと思うのですけれど、それを排除してEVFを付けたという点が革命のボディなのではないかと思います」と中明さんの説明は続きます。
ライカM EV1はライカM11のボディを基本的な骨格としながら光学式のレンジファインダーが内蔵されている部分をEVFのユニットに換装するというアイデアで作られたカメラです。そんなわけで正面から見ると右上にあった光学式ファインダーの四角いガラス窓がありません。
ライカQ系のEVFユニットを搭載
後ろから見ると、ファインダーのアイピースはライカQ系のスタイルで視度調整付き。EVFの見え具合もライカQに近いものを感じます。
「35や50といった焦点距離のレンズでなくても、望遠も超広角も制約なく外付けのファインダーの必要がなくこの本体だけで使えるようになったのは、ある意味での進化なのかなと思います。ノクティルックスなどの大口径レンズを絞り開放で撮影する場合にも、ピント合わせがしやすくなりました。もう、レンジファインダーでのガチピンチャレンジはしなくていいんです(笑)」
実用主義者に向けて作られたライカ
どんなレンズであってもEVFでピント合わせができるという利点に加えてライカM EV1の魅力はどこにありますか?
「軽さです。改めて持ってみるとメチャクチャ軽いです。ボディ単体の重量は500gを切っています。だから、より実用的になったのではないかと。このボディにコンパクトなレンズをつけるとカバンの隅にスッと入る。だから写真を撮る日だけでなく旅行や散歩にもとりあえず持って行きやすいカメラの選択肢として上がってくるカメラになっていると思います」
この軽やかさは、M型ライカを携行した経験のある人には更にありがたいと感じられるポイント。本機は軽いだけでなく、光学式レンジファインダーの測距用プリズムが入っていた小窓にはLEDが仕込まれていてセルフタイマーを使うと点滅してくれるという、お茶目な一面も持ち合わせております。
大口径の超広角レンズで撮る
では、ライカMEV1で撮影すると便利さが実感できるレンズを紹介してもらいましょう。まずはズミルックスMf1.4/21mm ASPH.ですね。
「レンズに関してはカタログにもあるように21ミリをつけると迫力もありますし、今まで制約のあった21ミリもちゃんと画面全部に気を配りながら撮影できます。撮れる画像を見ながら撮影できるのが外付けの光学式ファインダーとの違いです」
最短撮影距離までシームレスに
続いてはアポ・ズミクロンM f2/35mm ASPH.ですね。
「レンジファインダーには機械的な制約があり距離計が連動する最短撮影距離は約70cm。それよりも短い最短撮影距離のレンズで寄る場合、たとえばアポ・ズミクロンM f2 35mm ASPH.を使って30cmの距離で撮影する場合でもEVFならピントを合わせられる。このシームレスにピント合わせができる部分も大きな利点で、撮影のテンポやテンションを変えずに続けられるというのも、より撮影に集中でき、写真に集中できる機種かなと考えています」
外付けビューファインダーは不要
これは1本のレンズで3つの焦点距離に切り替えられるトリ・エルマーMF4.0/16-18-21mm ASPH.ですね。今までのM型ライカであれば外付けのビューファインダー必携のレンズです。
「M EV1であれば、『外付けEVFって使ってみると便利。でも嵩張って持ち運ぶのが面倒くさい』という悩みはなくなります。そこで荷物を1つ減らしてコンパクトにできるというのは大きいと思います。あと、目が悪くても視度補正機能をボディに内蔵しているので、そこも利点かと思います」
ライカRレンズを使いこなす
これは、フィルム一眼レフ時代のライカRシステム用に販売されていたアポ・マクロエルマリートR f2.8/100mmをMマウントアダプター経由で装着しています。システムと時代の枠を飛び越えてライカファミリーが合体していますね。
「M EV1は撮れる画像を見ながら撮影できるのが光学式レンジファインダーとの違いなので、M型で撮影の体験そのものを楽しむというよりも、撮影した写真自体を楽しむためのカメラになっているのかなという印象です」
その気になれば様々なレンズで撮影可能
こちらはマウントアダプター経由でニコンFマウントとして初めて世に出たズームレンズ、ズームニッコール43~86mm F3.5を装着していますね!
「ニコンの伝説的ズームレンズのヨンサンハチロクです。これ、9900円とかで買えます。こういうレンズ遊びもMEV1なら気軽にできます。僕もこのレンズを持っていますけれど、たま〜に触りたくなるんですよね(笑)。M型の制約から解き放たれたボディというのがお薦めポイントです」
趣味と実用の境界線に迫る
これはM型ライカを一眼レフとして使うためにフィルム時代に開発された光学式のペンタプリズムを内蔵したアクセサリー、ビゾフレックス専用のオールドレンズのようです。なんだか変態的な雰囲気なのですけれど、実用向きですか?
「ビゾ用のヘクトール125mm F2.5を光学式のビゾフレックス経由でM型ライカに使うのではなく、一眼レフのRマウントとして使うためのアダプター14167と、RマウントをMマウントに戻すアダプターを重ねていますがフランジバックは合っています。無限遠が出ていますね。拡大画面で確認してみても、かなりピントも出ています。この名玉、使えます!」
まとめ
いろんなレンズをシームレスに使いこなすことができるM EV1。M型ライカの選択肢が増えたことで、どのモデルにすべきか悩みも増えてしまいますね。
「もちろん従来のM方ライカの光学式レンジファインダーで撮影するという醍醐味はあります。撮影自体の体験を楽しむのは、やはり今までのM型かと思います。M EV1は純粋に写真とレンズを楽しむM型ライカという棲み分けになるかと思います。M型で画面の四隅まで構図を詰めたいという方はEV-1を選んでいただければと思います」
M EV1は、軽くて構図も組み立てやすい実用性に優れた新ジャンルのM型ライカという感じでしょうか?
「正直なところ最初は『なんだこれ?』みたいなアレルギー反応のようなものが自分の中にありました。でも実際に撮影してみると違和感なく普通のM型のカメラとしても使えるので、なかなか完成度が高いのではと思います。Qからライカを使っていてM型にステップアップするに際してワンバウンドする方にもいいかもしれないですね。逆に加齢による老眼でピント合わせを光学式でやるのが辛いという方が買い足すということもありました。結局、これしか使っていないという方もいらっしゃいます(笑)」
ご紹介のカメラ
ライカM EV1 1,379,400円
案内人
ヴィンテージサロン コンシェルジュ:中明昌弘
1988年生まれ。愛用のライカはQ3
執筆者プロフィール
ライター。1964年 東京・日本橋生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後、松下電器(現パナソニック)宣伝事業部に13年間勤める。2002年に独立し、「monoマガジン」「BRUTUS」「Pen」「ENGINE」などの雑誌やwebの世界を泳ぎ回る。初めてのライカは幼馴染の父上が所蔵する膨大なコレクションから譲り受けたライカM4とズマロン35mmF2.8。著作「人生に必要な30の腕時計」(岩波書店)、「ツァイス&フォクトレンダーの作り方」(玄光社)など。編集企画と主筆を務めた「Leica M11 Book」(玄光社)も発売中。
※価格は取材時点の税込み価格です