新宿 北村写真機店のカウンターで、お薦めライカを味わい尽くす|Vol.046ライカM10-R ブラックペイント
カメラのキタムラレビューサイト『ShaSha』より転載
はじめに
皆さんこんにちは。ライターのガンダーラ井上です。新宿 北村写真機店の6階にあるヴィンテージサロンのカウンターで、ライカをよく知るコンシェルジュお薦めの一品を見て、触らせていただけるという企画、『新宿 北村写真機店のカウンターで、お薦めライカを味わい尽くす』。本企画ではコンシェルジュの方にお薦めライカを用意してもらい、その機種の魅力を伝えていただいております。
コンシェルジュのお薦めは?
今回お薦めライカを見立てていただいたのは、新宿 北村写真機店コンシェルジュの押柄 和樹さん。彼はコンシェルジュとして活動開始して間もない新人さんですが、本企画で神棚級のライカとライカレンズの数々を解説してくれているライカフェローの丸山さんからの講話を受けるなどして研鑽中とのこと。さて、今日のアイテムは何でしょう?
ブラックペイント仕上げのライカM10-R
「本日のお薦めライカは、こちらになります」と差し出された、黒光りするライカM10-R。ライカフェローの丸山さんといえばヴィンテージのブラックペイントモデルですが、その指導を受けている押柄さんもブラックペイント推しのようです。
「なぜライカM10-Rのブラックペイントをお薦めしているかというと、先輩の中明さんがM11グロッシーブラックを取り上げられている(Vol.043参照)ので両機を比較する記事にできることと、このモデルが新品で出ているタイミングで購入意欲があったとしたら間違いなく選んでいたであろうカメラなので紹介させていただきました」
ライカM10の最終形態モデル
左がM10-Rのブラックペイントで、右がM11グロッシーブラック。塗膜の質感がどちらも光沢感たっぷりの仕上げになっていて、ユーザーと共に過ごした時間がペイントロスとなり、トッププレートの真鍮の地金が表出してくるような塗装です。それはそれとして、ライカM10-Rブラックペイントってどんなカメラですか?
「2021年7月に発売されたカメラで、M10が2400万画素だったのに対してM10-Rでは約4000万画素になっていてM10の最終形態のカメラとなっています。M10-RのブラックペイントはM10-Pのような外観に真鍮ボディとブラックペイントとなったことで重量感が増して、ずっしりしていて逆にそれが重みを感じて撮影するにあたり1枚1枚撮っていこうという想いにつながるのではないかなと思います」とのこと。
底蓋が脱着できる最後のデジタルM型ライカ
「外観としては底蓋の開閉キーがお気に入りのポイントです。利便性ではM11の方がささっとバッテリーやカードの取り外しができて便利ではあるんですけれど、こういった儀式めいたフィルムライカのような底蓋があることで、撮影体験が楽しめます」
フィルム機のM型ライカ、さらに遡って戦前に設計されたバルナック型ライカみたいな感じでライカM8以来継承されてきた底蓋が脱着できる仕様になっているデジタルM型ライカはM10-Rで終了しました。ちなみに底蓋開閉キーの位置はフィルム機のライカとデジタル機では真逆の位置にあるので、持ち替えると少々混乱する場合があります。
4000万画素のアドバンテージ
右がライカM10-Rの通常バージョン、左がM10-Rブラックペイントです。ここでM10系のおさらいをお願いします。
「ライカM10系ボディは、M10が2015年、シャッターを静音化して外観もシックになったM10-Pが2018年、4000万画素のモノクロ専用機M10モノクロームが2020年の1月、4000万画素のM10-R通常バージョンは同年の7月、そしてブラックペイントが翌年の7月の発売となっています。M10-Rの4000万画素という設定でも解像力は十分です。6000万画素もあると昔のレンズを使うと悪い部分も見えてしまうので4000万画素がちょうどいいラインであったり、データ容量もちょうどいいという方が多いです」
通常モデルと異なる表面の質感
左がブラックペイントで、右が通常モデル。同じライカM10-Rでも表面の仕上げで印象がガラリと変わってくることが分かります。
「こうやって比べてみるとだいぶ艶感が違いますね。やはりこの赤バッジがあるなしで印象は変わってくるかなというのがあります。赤いバッジがない方がシンプルで撮影対象に撮られている感があまり伝わらないだろうということと、ナチュラルなデザインが個人的に格好いいかと思います」と語る押柄さんに賛成1票。トッププレートの筆記体のロゴも効いています。
ペイントの剥離によって愛着を育む
ブラックペイントのシャッターダイヤルやISO感度切り替えノブなどは通常モデルよりも細かいダイヤパターンの彫刻がされているのもポイント。刻み目が細かいので塗装が剥離していくとヴィンテージ機のような雰囲気になることを目論んでいるようです。ちなみにライカM10-Rブラックペイントは生産台数の少なさからコレクター欲を煽ってしまうのか、M11グロッシーブラックよりも中古の価格は高いそうです。
「高いですけれど満足度は高いと思います。私自身もライカを使ってみた満足度は高かったですし購入して良かったなという気持ちなので。M10-Rに関しては底蓋など儀式めいたところも多少あるので、カメラを楽しみたい方向けのカメラだと思います」
ブラックペイントのレンズと組み合わせる
ここでボディに似合うレンズをお見立てしていただくと、やはりブラックペイントのレンズが登場しました。
「M10-Rのブラックペイントには、同じ塗り仕上げのグロッシーブラック、つやつやセットでございます。元になっているのは復刻版のズミルックスM f1.4/50で外観はズミルックス50mm初代モデルのデザインをイメージしたもので、中身は2ndバージョンのレンズ構成を採用しています。初期モデルの絞り開放でのふわっとした描写にくらべると、よりナチュラルになっています。硝材やコーティングが最新なので写りは現代的になりつつ、オールドレンズの味わいも楽しめます」とのこと。このレンズは最短70cmなのがオリジナルと大きく変わった部分。フードも鏡筒部品も真鍮製になるので、かなり重厚感があります。
左がお薦めの復刻版ブラックペイントで、右は外観の元ネタとなったオリジナルのズミルックス50mm F1.4のブラック仕上げ。雰囲気は継承されているけれど並べてみるとヴィンテージの方がスリムで軽量というのは自動車や腕時計の世界で展開される復刻モデルにも共通の特徴のように感じます。
「ライカのレンズは昔のレンズは劣っているということではなく、それぞれに味があるという評価があり、ズミルックス50ミリの旧世代のレンズもずっと人気のあるレンズで金額も高価になっています。お薦めの復刻版ブラックペイントは販売終了品になっているようです」
まとめ
というわけで、今回はライカM10-R ブラックペイントのご紹介でした。少々野暮な質問ですけれど、このカメラに素手で触ると指紋がつきませんか?
「沢山つきますね。僕が私物で使っているライカM11グロッシーペイントも同じ塗装で、やっぱり撮影が終わって防湿庫に入れる前に指紋を拭き取ることを必ずします。クリーニングを毎回することによって、より愛着が湧いてくるカメラですね。同じようにM10-Rブラックペイントも愛着のわく1台になるのかなと思います。通常カメラって傷つけたくないと思われる方が多いと思いますが、こういったブラックペイントは傷つけていくことで味が出てくるカメラです。操作部分のペイントも剥がれて行くのが楽しみになるようなカメラですね」とのこと。
このセットは自分のカメラを傷ひとつない状態で使い続けたいという考え方の真逆で、自分とカメラが共に過ごした時間を愛機に刻みつけたい人にうってつけのようです。
ご紹介のカメラ
ライカ M10-Rブラックペイント 1,826,000円
ズミルックスM f1.4/50グロッシーブラックペイント 770,000円
案内人
ヴィンテージサロン コンシェルジュ:押柄 和樹
ヴィンテージのブラックペイントライカの魅力に惹きつけられた新人コンシェルジュ。自分自身が使い込んでいくことでヴィンテージライカのような自分だけのライカを作り上げたいという思いから、念願のライカM11グロッシーブラックを手に入れたとのこと。
執筆者プロフィール
ガンダーラ井上
ライター。1964年 東京・日本橋生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後、松下電器(現パナソニック)宣伝事業部に13年間勤める。2002年に独立し、「monoマガジン」「BRUTUS」「Pen」「ENGINE」などの雑誌やwebの世界を泳ぎ回る。初めてのライカは幼馴染の父上が所蔵する膨大なコレクションから譲り受けたライカM4とズマロン35mmF2.8。著作「人生に必要な30の腕時計」(岩波書店)、「ツァイス&フォクトレンダーの作り方」(玄光社)など。編集企画と主筆を務めた「Leica M11 Book」(玄光社)も発売中。
※価格は取材時点の税込み価格です