新宿 北村写真機店のカウンターで、お薦めライカを味わい尽くす|Vol.032 ライカM6TTL0.85 グリーンペイントフィニッシュ

カメラのキタムラレビューサイト『ShaSha』より転載
はじめに
皆さんこんにちは。ライターのガンダーラ井上です。新宿 北村写真機店の6階にあるヴィンテージサロンのカウンターで、ライカをよく知るコンシェルジュお薦めの一品を見て、触らせていただけるという企画、『新宿 北村写真機店のカウンターで、お薦めライカを味わい尽くす』。毎回どんなライカが出てくるのか予測不能な展開でお届けしていますが、今回もどんなカメラが出てくるのか楽しみです。
コンシェルジュのお薦めは?
今日お薦めライカを見立てていただいたのは、新宿 北村写真機店コンシェルジュの水谷さん。前回は、ブリティッシュ・グリーンに塗装されたライカMPテリー・オニールというレアモデルを見せていただきましたが、水谷さんといえばスペシャル感のあるライカのイメージが定着してきました。さて、今回はどんなライカが登場するのでしょうか。
グリーンにペイントされたライカM6TTL

「本日のメインは、ライカM6TTL 0.85 グリーンペイントフィニッシュというものになります」と、カウンターの上に登場した緑色のライカ。トップとボトムのプレートの深い緑色に対して、貼り革の色はベージュっぽいグリーンで、おしゃれな雰囲気の色面構成です。
本機の発売は2001年とのこと。「このカメラの発売からもうすぐ四半世紀経ってしまうのですが、感覚的には2000年までは最近という感じもあると思います。300台の限定生産で、日本での正式な発売はなかったモデルになります」
ライカディーラー香港シュミットの特別企画

このカメラの来歴を知る手掛かりとして、販売当時に同梱されていた書類を見せていただきました。
「箱の中に証明書がありまして、そこにGREEN PAINT FINISHと記載がありましたので、今回ご紹介する名称としてはこちらを採用させていただきます」
詳しく見ていきますと証明書はエディションナンバーと当時のライカの社長および担当者のサインが入り、香港シュミット向けの特別モデルである旨の記載があります。箱はいたって普通のもので、白い紙箱に10478という番号の入っているもの。ストラップも大きな金具にプラスチックのプロテクターの付いたもので当時の標準品です。
ライカM6TTLミレニアムをベースにしたモデル

「このモデルは日本ではライカM6TTLサファリグリーンジャケット、あるいはM6サファリと呼ばれているようです。海外ではミレニアムサファリという呼び名で紹介されていることもあります」珍しすぎて、国や地域によって俗称が異なるんですね〜。
「海外でミレニアムサファリと呼ばれる理由としては、ベースになっているのがM6TTLミレニアムモデルであるというところもあると思います。こちらにご用意したのがM6のミレニアムです。2000年に2000台限定で発売したもので、シリアル番号はキリのいい250万からです」
こうして両機を見比べるという贅沢ができるのはヴィンテージサロンならではという感じです。「ミレニアムの翌年に発売されたグリーンペイントフィニッシュは番号が260万代であることに加えて、外観の仕様がミレニアムをもとにしているのかなと思われます。トップカバーにクラシックロゴが入り、M3タイプの巻き上げレバーと巻き戻しノブがついているというのはミレニアムからです」
軍用ライカのようにクローム仕上げされた操作部

「ミレニアムのブラックペイントはアイレットからカウンターまでブラック1色ですが、グリーンペイントフィニッシュは軍用モデルのライカM3オリーブを模してシャッタースピードダイヤル、巻き上げレバーや巻き戻しノブなどの部品はクローム仕上げになっています。比較のために軍用のライカM3などもご用意してあります」
冒頭で今日のメインはライカM6TTL 0.85 グリーンペイントフィニッシュだと水谷さんは宣言されましたけど、脇役が豪華すぎて大変なことになっています。左から2番目が軍用のライカM3オリーブで、確かに操作部がクローム仕上げですね。
オリーブではなく光沢感のあるグリーンが特徴

こうして並べてみると、ライカM6TTL 0.85 グリーンペイントフィニッシュの色味は他のオリーブ仕上げのモデルとは一味違うことが分かります。
「左端が軍用のライカM3です。左から3番目と4番目はデジタルのライカM-P(Typ240)サファリとM10-Pサファリです。グリーンのボディカラーの変遷ではないですけれど、並べてみると一旦グロッシーな塗料の光沢感を経て、またマットな方向に戻したというのが分かると思います。M10レポーターやSL2-Sのレポーターでは、よりマットな塗装になっています」
やはりシルバー色のレンズが似合う

「軍用、サファリ、あるいはレポーターとは異なる質感と色味のグリーンなので、珍しいという意味では価値があると思います」と語りながら、水谷さんはこのボディに似合いそうなクローム仕上げのレンズを用意してくれました。
「レンズもシルバーのものが合わせやすいのかなと思います。今回は1994年に200セット発売されたライカM6トラベラーセット用のズミルックス50mm F1.4をご用意しました。トラベラーセットのボディにはライカMPエルメスエディションに通じるようなスムースな手触りのカーフ革が貼ってあり、それと同じ素材で作られたアタッシュケースとショルダーバッグとセットになっていました」とのことですが、それは次回以降のネタとしてキープさせていただくことにします。
まとめ

というわけで、今回のメインはライカM6TTL 0.85 グリーンペイントフィニッシュでした。ここまで触れてきませんでしたが、本機のファインダー倍率は0.85倍です。
「高倍率なので28ミリの撮影枠は無くなってしまいますが、やはり標準レンズの50ミリを使うにはもってこいのファインダーではないかと思います。通常の0.72倍と比べるとフレームの範囲が広く見えるので50ミリのレンズが本当に使いやすいです」
0.85倍というファインダー倍率の仕様だけでもライカ通という印象であり、さらにダメ押しでレアな配色。しかもベージュっぽい貼り革が落ち着いた感じを与えてくれるので嫌味な感じがしないのが本機の持ち味です。グリーンという色が大好きで、その色に軍事物資的な凄みを求めず、なおかつ他の人とは違ったモデルを持ちたい方に好適な1台ですね。
ちなみに背景に置いてあるのがライカM6トラベラーセットで、これは別の機会にご紹介できればと思います。
ご紹介のカメラとレンズ
ライカM6TTL 0.85 グリーンペイントフィニッシュ ボディ 価格 4,020,600円
案内人
ヴィンテージサロン コンシェルジュ:水谷浩之
1985年生まれ。憧れのカメラはM3J、M3ブラックペイント。
執筆者プロフィール

ガンダーラ井上
ライター。1964年 東京・日本橋生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後、松下電器(現パナソニック)宣伝事業部に13年間勤める。2002年に独立し、「monoマガジン」「BRUTUS」「Pen」「ENGINE」などの雑誌やwebの世界を泳ぎ回る。初めてのライカは幼馴染の父上が所蔵する膨大なコレクションから譲り受けたライカM4とズマロン35mmF2.8。著作「人生に必要な30の腕時計」(岩波書店)、「ツァイス&フォクトレンダーの作り方」(玄光社)など。編集企画と主筆を務めた「Leica M11 Book」(玄光社)も発売中。
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