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カメラのキタムラポータルサイト『ShaSha』より転載

モノクロームでパラカヌーアスリートの素顔に迫る|写真展『On The Water』開催記念 写真家 木下大輔氏へのスペシャルインタビュー

撮影&文:ShaSha編集部

はじめに

2024年2月1日〜 2月14日の期間中、新宿 北村写真機店 6F イベントスペースにて写真展「On The Water パラカヌーアスリートの素顔」を開催しています。水上では皆が同じ目線で、同じ感覚で、同じ時を共有することができ、”水上のバリアフリー” と表現されるパラカヌー競技。競技に打ち込むアスリートを撮影した、写真家 木下大輔氏に、パラカヌーとの出会いや、魅力、展示作品についてインタビューしてきましたので是非ご覧ください。

写真家 木下大輔氏

パラカヌーとの出会い

- 木下さんとパラカヌーの出会いについて教えてください

仕事の兼ね合いでドローンを使ったパラカヌー選手たちの撮影をしたのが最初の出会いでした。ドローン撮影では待ち時間があったので、空き時間に選手を撮らせてもらっていました。「後でプレゼントしますね」というような簡単な会話をしながら撮影し、後日プレゼントしました。写真はモノクロ写真だったので、新鮮に感じていただき喜んでいただけました。「この写真を使って写真展をやってみたら面白そうですね」というお話をしたのが写真展開催のきっかけでした。

- パラカヌーに出会う前はパラアスリートへの支援を行ったことがありましたか

それまではパラアスリートへの支援はしたことはありませんでした。オーシャンカヌーの選手と面識があったので、スポーツとしてのカヌーには魅力を感じていました。
前述のドローンを使った撮影で凄く気になっていたのが、健常者の方と一緒になってパラアスリートが漕いでいたので、パラアスリートの漕いでいる艇がわからなかったことです。撮影を進めていくにつれて艇の特徴が若干ですが異なることを知りましたが、それでも一見すると違いが分からないんです。パラアスリートたちが、艇に乗り込んでカヌーを走らせると、健常者と遜色なく水面を走っている。その様子を見て心が震えました。パラカヌー競技が”水上のバリアフリー” と呼ばれる由縁を理解した瞬間でした。

パラカヌーへの支援

- どうしてパラカヌーへの支援をはじめたのですか

30代中頃に起業し、会社経営をするようになった時に、自分にはどのような社会貢献が出来るかについて考え始めました。そんな折に、写真を気に入ってもらい、「多くの人に知ってもらうために写真展をやりたい」と言われた時に、これは私にできる社会貢献ではないかと思いました。写真を通してパラカヌーの魅力を沢山の方に伝える事は、私が背伸びをせずにできる社会貢献だと気づき、取り組みました。

- 写真を使った社会貢献活動がどうして自分にぴったりだと思ったのですか

アートとしての写真への造詣を深めるために海外で過ごした経験や、デザイナーとしての実務経験から、写真が持つ力と向き合ってきました。また昨今取り組んでいる、「生きる」というテーマの作品制作がリンクし、写真がきっかけでパラカヌーに光が当たり、一人でも多くのファンや支援者、そして競技者がパラカヌーの輪に加わってもらえるお手伝いができれば、それは私なりの社会貢献活動になるだろうと考えたのです。
その第一歩として、写真展開催をご支援させて頂きました。その一環として先日行ったクラウドファンディングで支援金を集めながら、写真展の準備を進めてきました。

展示作品の紹介

- どんなテーマで撮影された作品になりますか

「パラカヌーアスリートの素顔」と副題をつけたように、選手たちの表情にフォーカスを当てた写真を中心にした作品で構成しています。一般的なスポーツ報道写真とは違った切り口だと思います。
今、進行中の作品制作では水辺に集う人々を撮影しています。なぜ人々は水辺に集まってくるのかという事を考え、そこに集う人々のさまざまな人間模様を写しとっています。今回のパラアスリートたちの姿もその延長線上にあると考え、競技者として切磋琢磨している姿や、仲間と共にリラックスする姿などなど、その時々の選手の心情を捉えた作品になっていると思います。今回の作品で、一人でも多くの方にパラカヌー競技の魅力を伝えることができ、心が動いて欲しいと願って取り組みました。

- 写真展では作品を34点展示されると思うのですが、いくつかご紹介頂けますか

選手として企業に所属されている方もいれば、普段は普通に会社員として勤務する傍ら、休みをとって競技活動をされている選手もいます。今回は合宿や遠征に同行して撮影させて頂きました。

こちらの写真に写っている辰己選手は、とっても気さくに話しをした選手の一人です。夏はカヌーを、冬はスキーをしているアスリートです。健常者のカヌーとパラカヌーの違いは、若干の安定性が向上されている程度で、水面より下の艇の構造が異なっています。この写真からはその違いを判別することは困難です。健常者と障害者のボーダーを感じさせない水上の姿です。

こちらの写真に写る髙木選手はパラカヌーと車椅子ソフトボールの両方で日本代表に選ばれています。今年行われる世界最大のスポーツの祭典では正式種目ではありませんが、2028年のアメリカ大会ではカヌーと野球の二刀流での出場に期待しています!実現すれば凄い事ですよね!
筋トレの一幕ですが、下肢は不自由なのでトレーナーが台に押さえつけて固定しています。上半身だけを見れば健常者と遜色のない筋肉でした。トレーニングに打ち込む目線の先には、他を圧倒する鋭さを感じました。

こちらは日本代表選手の中では最年長の今井選手です。この写真、とてもお茶目だと思いませんか。これは、羽田空港の国際線ターミナルで撮影した、海外で行われる大会に出発する直前の写真です。「最後の日本食を何か買ってくるわ」と言って買い出しに行かれたので、おにぎりのような純和食を想像しているとまさかのメロンパン。「思わず。それパンなので日本食では・・・」とツッコミを入れ笑顔が溢れた瞬間です。この時初めて距離がグッと近づいた気がしたのを覚えています。選手団をまとめる強いリーダーシップを持ち、拠点のある香川では若手の育成もされておりパラカヌーの兄貴分的な存在です。

私と同い年で、選手と子育てを両立させている加治選手です。石川県小松市で行われた合宿中の一コマです。練習終わりに、素敵な笑顔を見せながら反省会をしている瞬間。子供を持つ同年代の親としては子育てだけでも大変なのに、日本代表選手として活躍する姿をみていると、到底想像できない努力と苦労があると崇高な美しさを感じます。

こちらの写真は鹿児島の合宿所でトレーニングを行っていた朝日選手です。艇庫への通路を車イスで進む姿と、そのあと車イスから降りてカヌーに乗り込むところを写したものです。交通事故で足を失ってからは、色々なスポーツを試してきたもののあまり長続きはしなかったそうです。そんな中パラカヌーだけは川や湖といった自然と触れ合える喜びと、沢山の方と知り合いになり繋がりを持てたことで、今でも情熱を持って続けることが出来ているのかもしれないと仰っていました。

朝日選手

今回ご紹介した選手はほんの一部で、皆それぞれに日々研鑽を積む選手たちが沢山いる競技になります。話を聞けば聞くほど魅力的な選手たちなので、もっともっと光を浴びて貰いたいと思います。きっと選手たちは表彰台の一番高いところでもっと輝いてくれると信じています。
今回の作品はモノクローム専用機のLeica M10 MonochromeとNoctilux-M 50mm F1.0(E58)を主軸にして撮影しました。モノクロ写真にはカラー写真にはない、想像する余白があると思っています。その余白に加え、レンズ独特の描写から心の表情や体温を感じてもられば幸いです。
また今回の写真展ではパラカヌーへの支援を目的としたグッズ販売を行っています。クラウドファンディングでは賄えなかった今回の写真展実施費用の一部にもなりますが、販売収益の多くは、選手の合宿・海外派遣費用の助成、また協会の活動費用に充当されます。これからのパラカヌーを応援する意味で是非ともご支援くだされば幸いです。

今後について

- これからどういった支援をしていこうと考えていますか

今年、パリで行われる世界最大のスポーツの祭典で、表彰台の一番高いところで笑顔を見せてくれる選手の姿が見れることを切に願います。またその瞬間を一人でも多くの方と共有したいと思いますので、また写真を使ったサポート活動を続けられればと考えています。
最初は社会貢献活動の一環として考えていましたが、今回の写真展開催に際し、「パラカヌーに興味を持ちました」「〇〇選手を応援したいと思います」などのメッセージを頂くと、今回の活動が少し役立てたのではないかと感じています。日本ではまだまだマイナースポーツですが、日本中から声援が送ってもらえるメジャースポーツに成長して欲しいと思います。そして、障害の有無に関係なく共に助け合える社会の実現に微力ですが関わっていければと思います。

一般社団法人日本障害者カヌー協会からのメッセージ

●事務局長 上岡央子氏
障害を持つ沢山の方にこの自由を体験してもらいたいという想いで1995年に協会が設立されました。レクレーションとしてのカヌーを普及しながら、2010年に国際大会にパラの部が採用されたことを機会に競技部門をつくり競技へも挑戦をスターとし、2017年に一般社団法人化しました。リオ大会で初めて総合国際大会に正式種目に採用され1名が出場を果たし、東京大会では6名が出場しました。そして、今年9月に行われるパリ大会への出場を目指し活動しています。

●普及委員会副委員長 石原望氏
選手の合宿にサポートするスタッフとして参加して熱心に練習する風景を見せてもらったりすると、私のような選手ではない障害者も一緒に夢を見れるスポーツだと感じます。選手自身が感じるパラカヌーの魅力は勿論、それを応援する事で人生を豊かにしてくれる事も伝えて行ければと思います。

■木下 大輔氏プロフィール

1981 年 京都生まれ、東京を拠点に活動
デザイン会社にてグラフィックデザイナーとして勤務後、独立。グラフィックデザインだけでなく、自ら写真・動画撮影を行なうようになる。仕事を通じて、幼少期より好きだった写真表現の楽しさを再認識し、撮影からプリントまでが写真表現だと改めて考えるようになった。現在はプラチナパラジウムプリントでの作品制作をメインに写真作品の制作を行なっている。

2022 「Letter -私が誰かと繋がる方法-」弘重ギャラリー、東京
2022 「全日本モノクロ写真展 入賞」富士フィルムフォトサロン 東京、東京
2023 「神島写真塾 8 期生展」ピクトリコギャラリー、東京
2023 「第3 回 フォクトレンダー展 “Masterpiece”」新宿 北村写真機店、東京
2023 「第21回JPA公募展 優秀賞」東京都美術館、東京
2024 「On the Water」 日本障害者カヌー協会 主催 新宿 北村写真機店、東京

写真展「On The Water」について

・日時:2024年2月1日 (木) – 2024年2月14日 (水) 10:00 ~ 21:00
    ※2月1日 (木) は関係者内覧のため一般公開は 15:00~
・場所:新宿 北村写真機店 6 F イベントスペース
・住所:東京都新宿区新宿3丁目26-14
    地図はこちら
・入場料:無料
・主催:一般社団法人 日本障害者カヌー協会
・撮影:木下大輔

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